研究概要 |
愛知県は1990年の入管法改正以来,ブラジルをはじめとした南米からの外国籍住民の増加が顕著な地域である。ブラジル人たちが,日本社会に暮らし始め,文化・言語の違いにより,日本住民とのトラブルや摩擦が起こった。そして,問題を認識した地域住民たちによる「共生」への模索が続けられてきたことが,愛知県豊田市のH団地の事例などから報告されてきた。これら先行研究は,ブラジル人の増加が地域の解体要因であることを印象づけてきた。 しかしながら,私たちが調査を継続してきた西尾市からは,異なった知見が得られた。確かに,ブラジル人住民が増加することは,地域の日本人住民によって最初は「問題」として認識され,それに対応しようと活動が展開されてきたのであるが,活動を通じて,地域活動を再認識し,地域組織の再編,地域活動の再活性化というポジティブな側面が見いだされたのである。つまり,沈滞していた自治会が再組織化され,ブラジル人住民の参加が促され,両者が協力して「住みよい」地域作りを目指す姿が浮かび上がったのである。 ただし,同時に,問題がないわけではない。自治会に参加する日本人は,ブラジル人住民の受け入れに積極的であるが,西尾市民(800名)に対するアンケート調査,また,西尾市内の集住団地の日本人調査からは,ブラジル人住民が日本に住むことに対して,決して肯定的にとらえていない姿がうかびあがった。 また,これまでの知見は,どうしても日本人からのみた地域づくりに視点がいきがちで,ブラジル人当事者が,日本社会に参加することをどう考えているのかという視点は希薄だった。今後の課題としていきたい。
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