研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、福祉サービスの契約による利用が一般化する中で、「保護」と「自律」という福祉実践における目標を、制度・政策的にいかに位置づけるべきか、ということについて、提言を行うことである。本研究では、研究テーマの軸をなす「福祉契約」および「保護と自律」という問題について、多面的に考察を加えていった。その中で、福祉サービスの契約化という文脈の中で、保護と自律の問題を検討していくには、これらの諸問題が、具体的な人々の生活場面でどのような意味をもってくるかという点について、「利用者本位」という文脈に即して検討を加えることの重要性が、明らかとなってきた。「福祉契約」「保護と自律」「利用者本位」というとについて、本研究を通じて得られた結論はおおよそ以下のとおりである。まず、「福祉契約」についてだが、福祉の契約化が必要にされるに至ったのにはそれなりの理由があるのであり、その意味で契約化の積極面(選択権の保障)は正当に評価される必要がある。問題なのは、契約化や消費者主義的アプローチでは対応しきれない問題や、場合によっては問題をより深刻化させてしまう場合もあるというとを認識しないことである。次に「保護と自律」についてだが、今日、契約化に見られるように、「選択の保障」というレベルで自律の問題が浮上してきているように見える。しかしそれは、あくまでも選択肢の保障という点にポイントがあるのであって、基本的には、「自律(=オートノミー)の条件整備」を問題にしているのである。また、「利用者の意向が支配する状況」が「利用者本位」であるならば、それをもって自律の保障と見なすことはとりあえず可能であろう。しかし利用者が選択した事柄が、専門家の観点からすれば必ずしも適切ではないというのは珍しいことではない。うした点において重要となるのが、自律の条件整備として保護の問題を考える視点なのである。
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