研究概要 |
保健医療機関における退院援助は昨今の法改正などの影響を受けて効果性・効率性・経済性が問われるようになった.特に高齢者の入院は退院後の介護を要する可能性が高くなるため,サービス提供に関しては医療機関だけで完結するものではなく,退院後の地域サービスを含めた支援の検討を要する.本研究の特徴は我が国の地域医療機関システムを英国、米国の3国を比較してそれぞれの特徴を把握した上で退院援助のあり方を理論と実践の双方から検討を重ねた上で具体的に医療機関における退院システム作りを行った。それぞれの国の退院援助のあり方は、国の医療制度・政策が大きく関与しており、それを受けた形で退院援助のあり方が規定されている。またそれぞれの国の退院援助に関わっている援助者は制度政策から影響を受けている組織から期待されている役割を遂行していた。 とりわけ、ソーシャルワークの退院援助のあり方を検討した結果、単に退院援助システムのみではなくソーシャルワーク特有の専門職としての退院援助に関する知識,技術,価値観・倫理観を反映させ、クライエントの人権や自己決定を尊重した退院のあり方を展開している点はソーシャルワークの根管をなす部分であると確信した。さらに退院支援のスクリーニングリストをまとめ、実際に活用しその効果を提示した。これにより、院内のチームアプローチの方法を模索し、開発したスクリーニングチェックリストを活用することにより、早期に退院支援が必要な患者の早期発見、早期介入が可能となった。 今後の展望と課題として、昨今の法改正では,医療機関は治療終了後に安定した療養生活の継続を地域の医療保健福祉の諸機関と協働で取り組むことが必須となってきた.そのために院内でどのように退院援助を取り組むのかが課題である.退院援助に対する医師の理解や協力,院内でどのように退院援助システムを浸透させ,軌道に乗せるか,さらに地域と協力関係を構築し,よりよい連携を図る方法を模索し,今後さらに,患者自らが自分らしい生活を選択できる退院援助を考えていく必要がある.
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