研究概要 |
本研究では,従来のチームワーク研究をレビューしたうえで,心理学的観点から概念を整理して,妥当性と信頼性の高い測定尺度の開発に取り組み,精度の高い尺度を構成することに成功した。加えて,日常的にチームによる職務思考を行う看護職チームと発電所運転チームを対象として測定項目の構成の吟味を行い,職種に特徴的なチームワークを検討した。その結果,職種によってチーム・プロセスの構造において異なる側面を持つことを明らかにした。職種やチームで遂行する課題の特性によってチーム・プロセスが構造的に影響を受ける点は新たな発見である。今回開発した測定尺度の活用は、チーム・プロセスの特性についてより詳細に明らかにする取り組みへと発展の扉を開くものとなる。 また,集団過程に対するどのような働きかけ・マネジメントがチーム・コンピテンシーの育成・強化に有効なのか,アクション・リサーチの手法をとりながら,社会心理学および組織科学的視点から明らかにすることにも取り組んだ。医療・看護の現場で問題になっている大量の離職者の発生,職務満足感の低下の実態を把握するとともに,それらが日常のチーム活動といかなる関係にあるかを検討した。多様な変数が混在し相互作用する現実場面において,高度なチーム・コンピテンシーの育成・強化を実現するために,その根幹に必要な要素として職務満足感,とりわけプロとしてのアイデンティティー実感が強力な要素であることを確認した。この研究成果を発展させ,実際に現場の集団過程への働きかけとして,TQM(total quality management)チームの手法を取り入れて,自分たちのチームワークを客観視して評価し,不足している点・問題点を協議し,解決策を練り上げて,実践する取り組みを推進し,その効果性と克服すべき現実的課題を明確にすることに取り組んだ。
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