本研究の目的は、学級経営に関する教師-児童の相互的コミュニケーションを活性化させ、児童の視点から教師へ発せられた主体的意思伝達活動を教師の学級経営に効果的に活用するための実践的研究を行うことである。そのために、まず今教師に求められる学級経営方略を明らかにするために、従来の研究成果についての資料収集を行う一方、現場の教師に対して日頃の学級づくりで意識し実践している内容、必要だと考えている内容、担任した学級についての印象深いエピソードなどを中心に自由面接方式で聞き取り調査を行った。その結果、教師の学級経営には学習・生活面の指導、個々の児童の受容、軽度発達障害も含めて多様な特性を有する児童の理解、他の教師との連携などに加えて、児童からの働きかけへの対応が重要な要因となることが明らかになった。この知見をもとに、児童の視点から発せられた学級経営に関連した内容の主体的発言と、それらに対する教師の対応について、さらに詳しい聞き取り調査を行った。その結果、児童からの主体的意思伝達活動には、学級の集会活動を含む遊びや楽しみに関係した内容、学級のルール作り、授業に関連した内容、生活指導に関わる内容が含まれ、これらの発言・発案を教師が学級経営に活かすために必要となる一定のプロセスが示された。併せて、児童の発言を積極的に教師が取り上げることで、当該児童に限らず学級内の教師-児童間のコミュニケーションが活性化する効果も示唆された。当初の研究計画では、学級への参加観察を通じて学級経営に対する児童の教師への主体的意思伝達行動が効果的な教師-児童の相互的コミュニケーションの活性化につながる条件について検討する予定であったが、諸般の事情により学級現場での充分な検証が困難であった。従って、今後はこの点に関してさらに掘り下げた研究を継続して行いたい。
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