学校教育における英語のリーディングの授業では、英文を読んで理解し、和訳するという課題が与えられる。しかし、学習者が読む英文は必ずしも自分が読みたい英文ではなく、義務的に読むだけで、理解や和訳もおざなりになること(課題関与事態に陥ること)が危惧される。本研究では、第三者が与えた、読みたくない英文でも読みたくなり、英文内容の理解が促進されるであろう方略として、読解過程を問題解決過程として組織し、問題を与える際に実物教材を用いて答えを予想させることを採用した。 平成16年度は、三葉虫の化石とその解説を用いて、この方略を用いたテキストを作成し、その有効性を大学生を対象にした実験授業を行って検討した。その結果、英文の読みたさ評定、日本語訳の正確さ、両者の関連などの指標から、英文読解に自我関与する傾向がみられ、方略の有効性が示唆された。 平成17年度は、実物教材以外の、写真教材や文章教材でも同様の効果が見られるかを検討するために、問題提示に写真を用いるテキストと文章のみのテキストを作成し、テキストを用いた実験授業を大学生を対象に行った。その結果、問題の答えを予想し、その予想を英文を読んで確認するという問題解決事態の導入は肯定的に受け止められていたが、教材の違いの効果は見られなかった。また、平成16年度研究との比較では、平成16年度研究の遂行が勝り、実物教材を用いた問題解決過程の導入が効果的であることが示唆された。 しかし、2つの研究は、教材要因の他に学習者要因も結果に影響している可能性が高いので、今回はできなかったが、事後的に学習者要因を調整した研究ないしは分析を実施し、教材要因の効果を追求することがなお必要であると思われる。
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