研究概要 |
1.日本とアメリカの公共図書館で養育者向けに出されている絵本の読み聞かせに関する文書の内容分析を行った。その結果,日本の文書では,子どもと養育者との情緒的関係を重視する記述が多く,アメリカの文書では,読み書き能力との関連性や,命名,アクティブな参加を重視する記述が多いことが明らかとなった。 2.1の研究成果をもとに、絵本の読み聞かせ方・絵本の読み聞かせに関する信念を問う質問を作成し、子どもに対して使用する語、ことばかけに関する信念、望ましい子ども観についての質問とともに、1歳6ヶ月の子どもを持つ養育者に対して調査を行った。ことばかけに関する信念において、共感的ことばかけを志向することが、絵本の対話的読み聞かせ・受容的読み聞かせをよくすることと関係があり、共感的ことばかけ指向は、動作名での音節繰り返し語の使用傾向とも正の相関があった。また、望ましい子ども像において情緒社会性を重視する養育者は、共感的ことばかけを志向していることが分かった。 3.幼児における共感的認知については,保育園年長組・年中組の子どもを対象に、人称接尾辞付与による道徳的判断へ影響を検討した結果、判断そのものよりも、判断の理由付けに影響が見られることが示唆された。そこで、幼稚園年長組の子どもを対象として,植物と無生物に対する人称接尾辞付与が,道徳的判断に及ぼす影響を検討した。また、人称接尾辞付与が生物的属性の付与・生物学的推論に及ぼす影響もあわせて検討した。その結果,生物的属性の付与と生物学的推論では人称接尾辞付与の効果は見られなかった。道徳的判断においては、人称接尾辞群は統制群よりも、判断理由として感覚属性に言及して理由付けをする傾向が見られた。また、人間・植物・無生物に対する道徳的判断の理由は異なり、人間と植物には生物的な理由、人間に対しては感覚属性・感情を理由としてあげることが他の対象よりも多かった。
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