研究概要 |
「偏食」は,日本人生活者が,日常の生活において,食の問題行動を言及する際にもっとも頻繁に使用する言葉である。われわれは,「偏食」の意味構造を心理測定法によって解明し,4つの下位尺度からなる偏食尺度(HS)を標準化した。それぞれの下位尺度は,選り好み傾向(pickiness about food : PE),外食傾向(eat out : EO),栄養無関心(indifference to nutrition : IN),選択幅の狭さ(range of food eaten : RF)であった。偏食と関連性の強い心理傾向を調べる為に,主観的健康障害感尺度(HQ)。日本語版DEBQ,日本語版FNP,日本語版NEO-PI-RをHSと伴に,大学生を対象に施行した。結果は,偏食傾向の高さは,主観的な健康障害感(HQ),食物新奇性恐怖傾向(J-FNP),摂食抑制傾向(J-DEBQ)と正相関するというものであった。またパーソナリティとの関連性については,神経症的傾向とHS, EOとの正相関,開放性とEOとの負相関,誠実性とHS, IN, RFとの負相関が見られた。誠実性の5つの下位尺度については,すべてがHS, IN, RFと負相関した。日本においては,偏食者と特徴づけられる幼児や成人は,栄養上ならびに健康上の問題から注意の払われることがおおい。われわれの結果は,偏食者の食行動上の問題はパーソナリティと関連のつよいものであることを示しており,彼らの食習慣を改善させる為には,心理的要因に焦点を当てていく必要性を示唆するものである。なお本研究と関連するものとして,食物選択に及ぼす地域文化変数の検討,ならびに摂食抑制と関連性が強い身体心像の誤認知に関する研究をおこなった。
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