研究概要 |
本研究は,量的研究,質的研究,事例研究から成る。ライフレビューは回想法の一つであり,患者が自己の人生を振り返るという心理療法である。量的研究として,治療中のがん患者の抑うつ感と自尊感情に対するライフレビューの効果を調べた結果,抑うつ感と自尊感情の改善がみられた。次に,終末期のがん患者へのQuality of life(QOL)への効果について調べた結果,スピリチュアリティおよび気分などの改善に効果があることが明らかになった。質的研究としては,患者の語る内容を新しい質的分析方法であるテキストマイニングの手法を用いて分析した。これらより,QOLの得点と語りの内容の関係が明らかにされた。 回想法に基づいた認知行動療法を用いた研究として事例研究を行った。治療や病院生活に不安や抑うつ感を感じている患者に,回想法と認知行動療法を実施した。その結果,患者の抑うつ感が改善され,コントロール感を高めることができた。そのほかの事例も含め,終末期のがん患者に回想法を含めた認知行動療法が有効であることが分かったとともに,その適用には困難な部分があることも明らかになった。ADL(日常生活動作)が低い患者,治療中である患者のなかには,医学的治療に関心が強いことから,行動的技法の実践が難しかったり,心理療法への動機付けが低いために,適用が難しいことがあった。この療法の位置づけとしては,この療法を適用するには条件があり,今後さらに修正が必要であると考えられた。 学会発表等では,日本心理学会で,がん患者への支援というテーマでワークショップを開くことができ,多くの人に影響を与えることができた。
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