研究分担者 |
本城 秀次 名古屋大学, 発達心理精神科学教育研究センター, 教授 (90181544)
金子 一史 名古屋大学, 発達心理精神科学教育研究センター, 助教授 (80345876)
野邑 健二 名古屋大学, 医学部附属病院, 助手 (50345899)
村上 隆 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (70093078)
橋本 大彦 藍野大学, 医療保健学部, 教授 (90292911)
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研究概要 |
青少年の自殺およぴ自殺企図の問題は,青少年のメンタルヘルスにおける最重要テーマであるが,現在までのところわが国独自の研究の蓄積はほとんど認められない。そこで我々は,児童精神科外来で情緒障害と診断された児童青年とその親を対象として,児童青年の希死念慮,自殺企図に焦点づけて構造化面接,質問紙調査を実施した。親子ともに参加同意を得られた106組のうち,キャンセルや回答に著しい不備のあった親子を除いた82組(子どもの平均年齢は13.70±2.11歳,男児32名,女児50名)を分析対象とした。 希死念慮があると報告した者は33.3%,自殺企図を行っていると報告した者は15.1%にのぽった。質問紙得点で比較した場合,特に,希死念慮あり・自殺企画あり群の児童青年のA-DES, STAIC, CDIの平均得点は,いずれもクリニカルカットオフ・ポイントをはるかに超えていることが示された。特に,希死念慮の有無においては問題とならなかったA-DES得点が,自殺企図の有無における2群間の差異を最も際立たせていることが明らかとなった点は重要な知見であると考えられた。 精神医学的観点からは,希死念慮,自殺企図を呈する群に最も多く見られた精神科診断は,大うつ病性障害,全般性不安障害,精神病,社会恐怖,統合失調症であった。諸外国ではリスクファクターとされている物質乱用や行為障害は,本研究の対象者においては,自殺企図者に特徴的に認められなかった。 親が捉えきれない子どもの自殺企図にっいて検討した結果,子どもの精神病理が重篤になり自尊感情が損なわれないと親には気づかれにくいこと,また親自身が神経症的な防衛を使っている可能性があること等が示された。しかしながら,分析の対象となったサンプル数が少ないことから,結果の解釈は慎重に行うべきであると考えられた。
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