研究概要 |
脳血管障害により生じる言語障害-失語症では,コミュニケーションの問題に加えて,外出の機会が制限される,コミュニケーションの機会が少なくなるなど,心理社会的問題も生じる。近年では,失語症者の心理社会的問題を解決する1つの方法として,地域ボランティアを失語症者の会話パートナーとして養成する取り組みが行われている。しかし養成講座などを実施しても,パートナーのコミュニケーション評価法が未確立であるため,効果検証は困難である。本研究では,失語症会話パートナーのコミュニケーション評価法の開発を目的とした。 まず介護職のヘルパーを対象に,コミュニケーション障害への認識や対応の仕方を調査した。その結果,認知症や聴覚障害者には症状にあわせた対応が行われていたが,構音障害や失語症者には症状にあわせた対応が行われているわけではなかった。次に会話パートナー養成講座参加者を対象に,講座前後のコミュニケーション態度を,既存の評価法を用いて評価した。1つはKaganら(2001)の評価法の1部を用いた結果,講座後に改善したパートナーと,あまり改善しなかったパートナーがいた。またGarrettら(1996)の評価法を話題にあわせて修正し使用した結果,講座後に改善した項目と,あまり変化しなかった項目があった。既存の評価法を,わが国の社会・文化的背景や話題にあわせて,修正して使用することも可能であることが見出された。さらにパートナーのコミュニケーション態度が重要な役割を果たす失語症者の拡大・代替コミュニケーションに関する最新の知見をまとめた。 既存の評価法を修正して利用することで,コミュニケーション評価が可能であることも見出されたが,今後,本研究結果をもとに,わが国の社会・文化にあわせて,パートナーのコミュニケーション評価法を作成し,失語症者のコミュニケーションバリアを取り除くことが大切と思われた。
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