研究概要 |
視覚,触覚,自己受容感覚のそれぞれは,方向を知覚するための機能を備えている.しかも日常世界では,たいていの場合,これらの3感覚は統合的にはたらいて,われわれの視空間の構成に寄与している.この研究では,それぞれの感覚が,方向の知覚に関してどのような特性を持ったものであるかを明らかにすると同時に,この3感覚が統合されていく過程を解明することを目的した.今年の研究では,過去3年間の研究結果を振り返り,足らないところを実験などをして補いながら,総括につながるような論文の作成に力を注いだ.とくに,研究代表者は,1)身体の屈曲姿勢と大きさおよび距離の知覚,2)ロール運動をする身体の速度,移動範囲の,移動距離の知覚,3)身体の方向と皮膚面に与えられた刺激の触重力方向の知覚,4)体性感覚による水平床面知覚の解明を試みた.また研究分担者は,1)触・自己受容空間の原点(エゴセンター)の摂動性,およびポインティング事態における触・自己受容空間の原点と視空間の原点との関係,2),眼球運動と重力作用の関係,3)顔の向きと照明の方向が表情認知に及ぼす影響,4)傾きに関する幾何学的錯視などの研究を行った.それぞれの研究は次葉に示すように各種の学会誌などにすでに公表されている.
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