研究課題/領域番号 |
16530497
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
教育学
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
津田 純子 新潟大学, 大学教育開発研究センター, 教授 (90345520)
|
研究期間 (年度) |
2004 – 2005
|
研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
|
配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
2005年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2004年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
|
キーワード | ドイツ大学教育学運動 / 大学理念(フンボルト理念) / 大学教授法 / FD / 大学の理念 / FDの体系化と組織化 / ドイツにおける大学教育学運動 / 国際研究者交流 / ドイツ |
研究概要 |
19世紀末から20世紀前半に展開されたドイツ大学教育学運動の時代は、日本からの留学生やドイツ人お雇い外国人講師を通して、フンボルト理念、人文主義的な教養、ゼミナール制度が紹介された。この時代には、ドイツでは、フンボルト理念は学問的伝統に根ざし理論上保障されるものと共通認識され、目本の近代大学制度のドイツモデルとは、この頃のドイツの大学論がもとになっている。しかし、ドイツ大学教育学運動については見過ごされた。 ドイツ大学教育学運動では、フンボルト理念に基づく大学の伝統(学問による陶冶)が重視されるとともに、ドイツが指導的役割を果たした国際的な新教育運動と連動し、大学教育学運動家には新教育運動家も含まれていた。大学教育学運動家はその影響を摂取しながら、学習者を対象とする教育学や隣接諸科学(心理学、生理学、成人教育学)、学習者主体の教育方法(直観教授法)、学習者参加型の教育方法(演習、実習)、ベル・ランカスター法を大学教育改革の重要な要素とみなした。ここでは、フンボルトの指導理念(学生の自立的な学習法)を達成するために、学生の多様化に応じる「学生相談」や、学生が「学習の自由」を有効に活用するための大学生活ガイダンス(「教導学、Hodegetik」)が論じられた。 このような視野での活動は、関心を持つ人に開かれた18世紀以降のアカデミー活動の方法と同様に展開され、世界最初の『大学教育学入門』の体系化と大学教育学講座の開設(1922年にグライフスヴァルト大学)という成果をもたらし、運動の組織化と制度化の戦略は、今日のドイツ大学教授法研究協会(AHD)に踏襲されている。『大学教育学入門』には、今日の生涯学習社会では大学教授法基礎理論の一つとなっている「アンドラゴジー」、ヘルバルト学派によって長く教育学の対象外とされた、成人教育学に既に着眼し体系化しようとした先駆性がある。またそのフンボルト理念の継承法は、学生の観点から学習改革や職業教育を大学教育の使命と定めた大学大綱法(1975年)以降の今日の国際的な「学習パラダイムへの転換」を指向するものである。 フンボルト理念の日本での歴史的変容は、第一に「学問による陶冶」が学外の学生の自己学習(「読書による教養」)の形で結実し、第二にフンボルト理念が教員の「学問イデオロギー」として捉えられたことである。その為、教員は管理者の視野で大学教育改革を論じ、学生側の視点を欠落させやすい。国際的な「学習パラダイムへの転換」とその戦略としてのFDの意義づけは、日本では「研究重視の教員文化を教育重視型へ転換」に焦点化されている。後発国日本ではFDの導入が大学評価の文脈で始まり、教養教育改革や国際的な質保障、FD義務化を背景として、FDは急速に普及している。現在のFDは自己目的化する傾向にあり、国内外のFD調査研究やプログラム開発は中央のFD専門家支援機関を欠いたまま非効率に進められ、活動領域は収斂されず拡散し教員やFDスタッフを疲弊させる状況にある。このような問題状況への対策は、ドイツ大学教育学運動以降の展開を参考にするならば、国際的な「学習パラダイムへの転換」を国際通用性の原点として共通認識し、このもとで相互支援の国内外・学内外ネットワークづくりと、FD調査研究やプログラム開発に組織的に取り組むことであろう。
|