研究概要 |
本研究は,ライフコースアプローチに基づく教師の発達と力量形成に関する調査研究である。具体的には,第1は、9つのコーホートに対する質問紙調査結果(総回答者数:994名、回収率:46.4%)を実施し,過去4回の同様調査結果と量的統計的に比較分析を行った。第2は、10年前に面接調査を実施した対象者(11名)に対する追跡的面接調査結果を前回調査結果と質的事例的に比較分析を行った。その結果の特徴は、 1.新任教師の約8割が実践上の「ゆきづまり」を「感じている」、約4割弱が教職を「辞めたい」という回答をしている。「ゆきづまり」の内容としては、すべての年齢段階の教師において「子どもの能力差」というのがトップにあがってきている。また今回調査で指摘が増えてきた事柄としては「保護者との対応」というものがある。「やめたい」と思う理由については、圧倒的に「仕事量が過重」という事柄がすべての年齢段階の教師においてトップにあがってきている。 2.ライフコースの追跡的面接調査からは、多くの教師が、前回面接調査からの10年、子どもとや保護者との対応に、苦しみかつ悩むことが多くなってきていることが明らかとなった。この10年間における、子どもと保護者の意識の変化と多様化は、非常に激しく、大きい。 多くの教師にとって,現在は,離職という危機の時代である。しかし、悩み苦しみながらも、実践的にそれを克服する過程において、多くの教師が教育専門家としての発達と力量形成を遂げてきている。そういう意味で,もう一面では、成長への転機の時代でもあるといえる。
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