研究概要 |
本研究の目的は,生涯学習の視点から高齢障害者の「学習」を支援するための具体的プログラムの開発を行なうことである.そのために,2つの研究を実施した. 市民活動支援総合情報システムにて「生涯学習施設」と登録されている施設から系統抽出方によって718施設を抽出し,郵送調査を実施した(有効回答数55.6%).健康上の問題で活動への参加が困難となった60歳以上の方がいる団体は全体の70%であり,そのうち42%は高齢者が活動に復帰した経験があった.多くの団体は,参加者の意志があれば参加が継続されるようにさまざまな工夫を行っていたが,「車いす利用者の参加が可能」と回答した団体は全体の36%,「認知症の方の参加が可能」は3%であった.つまり,生涯学習施設を利用する高齢者は,障害によって学習の継続が困難となり,かわって介護保険制度下の施設が学習の場となることが推測された. 次に,通所介護施設利用者とその支援者が参加して学習支援プログラムを度試行的に作成した.そしてその学習支援プログラムの効果をADL, QOL,認知機能の点から検討するために介入研究を実施した.学習者は協力施設(通所介護施設)を利用して在宅生活を送る60歳以上の高齢者のうち参加同意の得られた10名であり,1時間のプログラムを週1回6ヶ月実施した.また同施設の集団プログラムに参加する7名を比較対照群とした.学習プログラムは,書字,音読,計算などの基礎的能力の維持・改善,個人にとって意味のある作業をすることによって過去と現在の自分を統合する,新しい生活課題に挑むための有能感を見いだす,他者との交流によって新たな役割を見いだすなどのテーマが導き出され,具体的な活動は毎回の話し合いによって変更していった.その結果,介入群のSF8の心の健康スコア(MCS)得点は,介入前と比較して介入後に有意に高値を示した.通所介護施設における学習支援プログラムは,QOLに影響を及ぼす可能性が示唆された.
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