研究概要 |
ブレア労働党政権はwelfare-to-workを理念に、特に青年の被雇用能力改善の諸施策を打ち出し、教育と福祉の協働を推進してきた。この被雇用能力改善は、たんに労働市場への参入促進にとどまるならば、高度な知識集約型の産業構造とグローバリゼーションの進行の中では、低賃金・労働強化を強いられる層と高度な知識獲得を背景に豊かな利潤の分配を得る層とに二極化していく傾向を促進することになる。 そして、前者は社会的に排除されていく。そこで、教育アクション・ゾーンを設定し、その地域の学校などに特別補助、ならびに改善の成果に応じての褒賞助成を行った。また地域でのtruancyや10代母親へのケアと、社会的に排除される因子を持つグループの社会的参加に取り組んできた。 しかし、福祉費は減っており、貧困の傾向は今日も大きく変わらない。つまり、平均以下の収入の世帯の個人の人数は、1979年「不満の冬」の8.5%(500万人)から増加し続けている。そして、ピーク時の92-93年の25%(1330万人)からは横ばいの状況であり改善されていない(98-99年で、25%、1420万人)。【DSS, 199a, p172 ; DSS, 2000, p205】 これらは、教育費などの増加にみるように褒賞のシステムでアド・ホックに出されるもので、基盤全体として充実させることにはなっていない。 ニュー・レイバー政権下での社会的公正は、welfare-to-workによる諸施策に貫かれている要素である市場的競争によりその効果性が大きく損なわれているといわざるを得ない。
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