研究概要 |
本研究の目的は,民主的な資質を育成するために、中学校数学科の論証指導カリキュラムを開発し、開発されたカリキュラムに基づく指導の有効性を実証することである。主な研究成果は次の2点である。 ●民主的な資質を育む論証指導カリキュラムを開発するための理論的な枠組みの構築 数学教育における定義の理解に関する4段階(水準0:個々の図形の性質,水準1:図形の定義,水準2a:絶対的に捉えた定義の属性,水準2b:相対的に捉えた定義の属性)と,民主的な資質としての規範の理解に関する4段階(水準0:規範自体が対象にならない,水準I:規範自体は対象となるが、その属性が理解されていない,水準II:範の属性が理解されるが,絶対的に捉えられる,水準III:規範の相対性が理解される)を対応させることによって,民主的な資質を育む論証指導カリキュラムを開発するための理論的な枠組みを構築した。 ●理論的な枠組みに基づくカリキュラムの開発と実践 開発された理論的な枠組みの基づき,中学校第2学年の数学科の単元「平面図形」と,道徳における規範の理解を関連づけるカリキュラムを開発した。開発に際して,数学科と道徳で共通な用語「取り決め」を用いて生徒が両者の内容を関連づけやすくなるようにするとともに,数学科と道徳の内容を関連づけて扱う授業を設定するようにした。その上で,公立中学校第2学年でカリキュラムを実践し,カリキュラムの効果と限界を特定した。
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