本研究は、青年期の聴覚障害学生を対象とした「聴覚障害学」の授業を通して、望ましい障害認識を促すための新たな指導法と教材を開発し、実践の中で評価検討を加えた上で、他の教育機関にも普及させていくことを目的として行ったものである。この研究を通して次のような成果を得ることができた。 1 障害認識を促すために行ってきた「聴覚障害学」の授業内容、授業活動の要点、留意点、使用する教材、学生に提示するスライドなどを整理し、あるべき指導法と教材の姿を提案するための資料を作成した。 2 特に次の2つの課題について、指導法と教材に対する評価を詳細に行った。 (1) 過去から現在に至る聴覚障害者の状況を把握させた上で聴覚障害の理解を促すことを意図した授業を計画し、そこで用いる教材を構成した。それに対する学生の評価を求めたところ、選択した教材が障害認識を促す上で有効であることが明らかになった。 (2) 同じ障害を持つ卒業生の意見を教材として使うことについて学生に評価を求めた。その結果、先輩としての卒業生の発言が学生の心を播さぶり、刺激を与え、障害認識を深めるために有効に働くことが明らかになった。 3 「聴覚障害学」の授業全体に対する学生の評価について、「授業に関するアンケート調査」の結果を検討した。学生からは極めて高い評価を得ており、障害認識を促すための指導法及び教材の開発の作業がほぼ所期の目的を達していることが明らかになった。 4 研究の成果を普及させるために研究成果報告書を作成し、関係機関に送付した。
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