研究概要 |
本研究は,盲児用点字教科書発行の変遷と今後の編集システその在り方を探ることを目的に,これまでに発行された文部科学省著作点字教科書と,通常の学級で学ぶ盲児が使用しできた点字教科書の編集方法を検討し,以下の結果を得た。 (1)昭和49年度から平成17年度までに発行された文部科学省著作盲学校小学部国語および算数の点字教科書と,その編集方針と内容をまとめた編集資料を検討した結果,検定教科書の内容そのものの大幅な修正は行わないことを大原則としつつも,年代を追うごとに盲児の特性を踏まえた様々な配慮がなされてきたことが明らかとなった。 (2)現存する昭和初期から昭和40年代まで使用された盲児用に独自に編集された国語点字教科書の内容を精査した結果,盲教育の先達が,視覚を活用しなくとも,いかに盲児に正しい概念を形成させるかという基本的な課題に取り組んできたことが明らかとなった。 (3)通常の学級で学ぶ盲児が使用していた点訳ボランティア作成の算数点字教科書の編集内容を検討した結果,特に図の点訳については,晴眼児が利用する検定教科書の見取図をそのまま触図にしたものが多く,盲児の特性を踏まえた配慮に欠けており,編集方法に関する共通理解の必要が示唆された。 本年4月から特別支援教育が新たにスタートし,今後は通常の学級で学ぶ盲児の増加が予想される。したがって,文部科学省著作点字教科書の編集においても,かれらが活用できるような視点での編集が求められている。通常の学級で学ぶ盲児の点字教科書の編集システムの確立には,まだまだ時間を要するが,盲学校の実践とその成果の活用なくしては,到底及ばないものと考える。盲学校教師として長く勤務した者の一人として,今後も研究を継続していきたい。
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