研究概要 |
3年計画の最終年度であるため,研究成果報告書を作成した。報告書には,特別支援教育にかかる調査を2つ掲載した。一つは,小中学校の生徒指導主事と養護教諭を対象にした「小中学校における特別な支援が必要な児童生徒への対応に関する調査」で,調査結果から,回答者は両者ともLD等の発達障害と不登校や非行問題の関連を感じていながら,具体的に対応できない理由として,(1)障害理解が不十分である,(2)学年や学級で対応している現状がある,(3)校内支援体制が十分機能していないなどを挙げていた。その背景には,事例から学ぶことが多くても,この事例を職員間で共有していない現状や,小中学枝において校内委員会の活動の温度差も見え隠れしていた。 二つ目の調査は,生徒指導主事を対象にした「特別支援教育に関する教師の意識調査」である。この調査結果からは,特別支援教育を推進することで,(1)学力向上に関連すること,(2)不登校や非行問題の予防的な改善策になると理解していることなどが明らかになった。特に学力向上との関連では,一部の特別な支援が必要な児童生徒を対象にした特別支援教育であっても,結果的には学級担任の日々の授業改善につながり,学級全体の児童生徒の学習意欲や授業中の学習態度の改善につながっていたようである。 また,各研究協力者からは実践事例報告を得ることができた。 養護教諭担当φ研究協力者からは,市内の養護教諭部会で実施したアンケート調査から,保健室で個別支援を要する児童生徒がいる学校は,小中学校で約83%であり,その内訳は,不適応と発達障害の疑いがある児童生徒であったと報告している。また.養護教諭という『専,門性を活かして,発達障害の疑いがある児童の対応に関して,情報を通常の学級担任と連携,するために「保健日誌」を上手に活用する方法が提案された。 特別支援学級担任である研究協力者からは,校内支援体制の構築方法や特別支援学級での発達障害の児童生徒に対する具体的な対応方法等の情報提供を得ることができた。特に,特別支援教育コーディネーターである協力者は,校内委員会の活動において,全職員の情報の共有が重要であり,そのための具体的な方策の提言も得ることができた。 管理職である研究協力者からは,学校運営の中心に特別支援教育をおくことで,前述の調査結果と同様に,学力向上や不登校問題の予防的な対応が可能になることを報告しさらに管理職として職員に「特別支援教育だより」を発行することで,職員の意識の向上に役立てているとの報告が得られた。
|