研究概要 |
1.Lerghゼータ関数の多重二乗平均: 以下,sを複素変数,χ,λを実パラメタでω>0とし,e(λ)=e^<2πiλ>とおく.Lerchゼータ関数φ(s,χ,λ)は級数Σ^∞_<l=0>e(λl)(l+χ)^<-s>およびその全5平面上の有理型関数への接続として定義されるが,これはλ∈ZのときHurwitzゼータ関数ζ(s,χ)のに,さらにはχ=1のときRiemannゼータ関数ζ(s)=ζ(s,1)となる.ここにζ(s,1+χ)を定義する級数はζ(s)の各項をZからl+χ(l=1,2,…)に変動させて得られることに注意する.以下m≧1を整数,α>0を固定された実数とするとき,この文脈のもと,最近Lerchゼータ関数の多重二乗平均∫^1_0…∫^1_0|Φs,a+χ_1+…χm,λ|^2dχ_1…dχmが本研究代表者によって導入され解明が行われた.ここでは本研究代表者が以前[Collect. Math.(1997)]において展開した解析手法を深化させ,上の多重二乗条平均のIms→±∞における完全漸近展開が確立している([Collect. Math. (2005)]掲載). II.非正則Eisenstein級数に付随する完全漸近展開: 以下,z=χ+iyは複素上半平面にあるとする.二次形式Q(u,v)=|u+uz|^2に付随するEpsteinゼータ関数ζ_z^2(S;z)が級数Σ^∞_<m,n>=_<-∞>Q(m,n)^<-5>(m=n=0となる項を除く)およびその全s平面上の有理型関数として定義されるが,そのy=Imz→+∞における漸近的性質は,例えば,数論的二次形式の研究において重要な役割を果たす.本研究代表者は最近ζ_z^2(s;z)のy→+∞における完全漸近展開を導いたが,その証明をさらに高度化・深化させ,ζ_z^2(s;z)のzの虚軸方向へのLaplace-Mellin変換に対しても,y→+∞における同様の完全漸近展開が存在することを示した([Ramanujan J.]掲載予定).次にκを任意の偶数とする.8L_2(Z)に付随する重さたの非正則Eisenstein級数が,(y^s/2)Σ(c,d)=1(cz+d)^<-κ>|z+d|^<-2s>およびその全s平面上の有理型関数への接続として定義されるが,κ=0のときに成立する関係式E_0(s;z)=y^sζz^2(s;z)/2ζ(2s)により,直ちにE_0(s;z)のy→+∞における完全漸近展開が導かれる.本研究代表者は(日本大学・野田工専任講師と共同で)最近,Maassの重さ変更作用素を上記E_0(s;z)の漸近展開に繰り返し作用させることで,E_κ(s;z)のy→+∞における完全漸近展開を確立した(欧文学術雑誌に投稿中).
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