| 研究概要 |
幾何結晶の理論とは,代数多様体上に群から誘導される結晶基底の作用と類似の作用素を定義し結晶基底と類似の構造を多様体上に構成するもので,熱帯化/超離散化とよばれる操作によりある種の結晶基底 と対応することが知られている。この幾何結晶を色々な多様体上に構成することを研究の目的とし,実際に申請者はKac-Moody群に付随したSchubert多様体上に幾何結晶を構成することに成功した。さらに,いわゆるアファイン型と呼ばれるKac-Moody群に付随するSchubert多様体上にWeyl群のtranslationからきまる特殊な幾何結晶の構造を導入した。この幾何結晶の著しい性質は,まず自然に正構造をもつことであり,さらにそこから超離散化によって完全結晶の極限と呼ばれるものを得られることがわかった。Mまた,この幾何結晶の積にtropical R mapとよばれるR-行列の類似物が得られることもわかった。この完全結晶はアファイン型の結晶基底の理論において極めて重要な研究対象であり,数理物理学における可解格子模型の理論や,Kirillov-Reshetikhin加群の理論においては中心的な役割を担っている。量子群の1の巾根の表現論についても,アファイン型の場合に2種類のevaluation表現がいつ同型になるかについての必要十分条件を得ることに成功した。マルコフトレースは重要な位相不変量の1つであり,その定義から位相幾何学的な意味においてもヘッケ環の表現論的な意味においても興味深い対象であり五味は,マルコフ性質というものを定義しマルコフトレースを一般の場合に構成する方法を提示した。また,筱田はゼータ関数と有限簡約群のGelfand-Graev表現の関係について具体的な計算を用いて興味深い結果を得た。
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