研究概要 |
abc予想は数論の難問題と言われている.Fermatの大定理,G.Faltingsによって解かれたMordell予想,Siegel-zero問題についての部分的結果,などを従える事からも分かる.abc予想の非常に弱い形の表示は,通常の対数のp進版の有理整数の一次結合であるp進対数一次形式の下からの評価から計算できることが,R.Tijdeman,C.Stewart,Kunrui Yuらの仕事からわかる.しかしp進対数一次形式から得られる評価は十分ではないため,まず研究代表者はLutz-Weilのp進楕円関数について,通常のp進対数一次形式の楕円曲線上でのアナロジーに対応する評価の計算をおこなった.研究代表者がS.David氏と共同で開発した新しい方法に乗っ取ったFormal groupとG.Chudnovskyの手法を用いた下からの評価である.このS.Davidとの共同研究はLinear forms in elliptic logarithmsというタイトルでJournal fur die reine und angewandte Mathematik(Crelle)に掲載予定であり,S.Langの予想を完全解決した結果である.当初の目的であったp進楕円対数一次形式の評価はプレプリントであるが,楕円曲線のformal groupによる扱いから得られる楕円対数関数のべき級数展開の係数の整数論的評価についてはSinnou David and Noriko HIRATA-KOHNO,Logarithmic Functions and Formal Groups of Elliptic Curves,(Diophantine Equations,Tata Institute of Fundamental Research,Studies in Mathematics,Narosa Publishing House,2008,243-256)に掲載された.同じ手法をGaussの超幾何級数に応用し,超幾何級数を積分表示した関数を無限遠点において展開したものをアーベル多様体の指数写像の逆写像つまりアーベル対数関数として捉えて評価を行った結果がM.Huttnerとの共同論文Diophantine approximation of the values of hypergeometric function of Gauss,AIP Conference Proceedings Volume 976(ed.Takao Komatsu)Diophantine Analysis and Related Fields:DARF2007/2008,Kyoto,ISBN:978-0-7354-0495-3,2008,106-110として出版された. なお関連する手法から指数方程式に整数解の存在しないための十分条件を得ることも出来た.これはS.Laishram,T.N.Shorey and R.Tijdemanとの共著論文An extension of a theorem of Euler,Acta Arithmetica vol.129(1),2007,71-102として出版された.
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