研究概要 |
滑らかな多様体MはJ^2=-1を満たす(1,1)型テンソル場Jを許容するとき,概複素多様体と呼ばれる。概複素多様体の概念は複素多様体の概念の自然な一般化である。概複素多様体M=(M,J)はその概複素構造JがM上のある複素構造に付随したものに一致するとき,積分可能であるといわれる。2次元概複素多様体はすべて積分可能であるが,4次元以上の概複素多様体に関してはこのことは正しくない。概複素多様体(M,J)にJにcompatibleな(擬)リーマン計量gを併せ考えたM=(M,J,g)を概エルミート多様体という。ケーラー多様体はもっとも典型的な概エルミート多様体のクラスである。本研究課題においては,次の3つの話題を中心に研究を進めた。 (1)概複素構造の積分可能性について (2)概複素多様体の各種部分多様体について (3)上記(1),(2)に関連した話題及び応用について (1)に関しては,「Goldberg予想」(コンパクト・アインシュタイン概ケーラー多様体は積分可能である)を中心に研究をおこなった。「Goldberg予想」の不定値計量版に対して,松下はある種のWalker計量をもった8次元の反例を与えている。しかしながら,予想そのものはスカラー曲率が負の場合は未解決のままである。(2)に関しては橋本により,6次元球面内のJ-正則曲線の変形やJ-正則曲線の周りのチューブについてグラスマン幾何の視点からの研究がなされている。(3)に関しては,長谷川は,「Benson-Gordon予想」(コンパクト完全可解多様体に入るケーラー構造は複素トーラスに限る)を含む最も一般な形の予想を解決している。
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