研究概要 |
多様体の幾何構造は多くの種類があるが,我々が取り上げるのは主に共形幾何と関係の深いものである.以下に得られた結果の一部を述べる. 1.共形的な多様体M上の正則曲線x:I→Mに射影構造を定義することができる.これは研究代表者と和田によるシュヴァルツ微分を用いてできる.さらにMが標準的球面のときIの射影展開写像が単射ならば曲線xは単射である,すなわちこの曲線は自己交点を持たない.この結果は曲線の内在的性質から外在的性質が導かれる点で興味がある. 2.実数でない複素数aが与えられているとする。fを連続微分可能な複素平面の領域で定義された複素関数とする.もし非調和比がaであるような4点が同じ非調和比を持つ4点に移されるならばfはメビウス変換である.これは1996年に発表されたHaruki,Rassiasの定理の拡張である.彼らの定理では複素解析的な単葉関数であることが仮定されていたが,微分可能性の条件をここまで緩めることが出来た. 3.共形微分幾何における山辺の問題の射影微分幾何版を定式化した.負のスカラー曲率をもつアインシュタイン計量のリーマン接続を,変分法によって,アフィン微分幾何の概念だけで特徴づけした.ここでは振れ無しで体積要素を保つ接続に限定して考えている. なお交付申請書の研究目的欄には毎年,山辺不変量の問題,特に2次元球面と2次元球面の直積多様体の山辺不変量の評価をすることを書いたが特記すべき結果は得られなかった。
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