研究概要 |
今回の研究成果は主に以下の通りである. 1.パーコレーション,自己回避ランダムウォークなどの臨界点での2点関数の振る舞いを非常に詳しく解析し,その漸近形を同定しただけでなく,誤差についても現時点で望みうる最高精度の評価を得た.この結果はレース展開による解析の一つの到達点を示すものと自負している.この結果はAnnals of Probabilityに受理,出版された.また,この研究の副産物として,ある種のランダムウォークモデルの2点関数の漸近評価に関する補助的な結果も得られたので,現在,論文にまとめている. 2.p-q modelは,パーコレーションクラスターにおいてoccupied bondは重みp,その境界のボンドはqの重みを持つものとして定義され,パーコレーション(q=1-p)とlattice animal(q=1)をつなぐモデルである.以下の結果を得た:(1)このモデルに適用できるレース展開を開発し,(2)van den Berg-Kesten型の相関不等式も証明した.(3)p-q modelはパーコレーションとlattice animalをつなぐ形の相図を持つ.(4)しかし,p-q modelの臨界現象はq>1-pである限りlattice animalと同じである.(5)p-q modelの上方臨界次元は8と予想される.これらの解析の結果,パーコレーションとlattice animalの関係,及びパーコレーションの特殊性が明らかにされた.これらの結果は論文執筆中である. 3.4次元に相当する階層的自己回避ランダムウォークのモデルをくりこみ群を用いて行った.階層的構造を利用するとくりこみ変換はかなり簡単な形に書けることがわかり,その厳密な解析も厳密に遂行できた.結果として,このモデルの臨界現象をほぼ完全に解明することに成功した.この結果は現在,論文執筆中である.
|