研究概要 |
生物学的同等性の定式化には,平均同等性(ABE),母集団同等性(PBE),個別同等性(IBE)の3つがあり,同等性の概念としてはABE<PBE<IBEの順で強くなり,一般には解析手法,その理論解明もABE<PBE<IBEの順で複雑となる。本研究では,信頼区間と検定手法の関連を解明することを主題に据え,3種の同等性について順次研究を進めた。ます,ABEに関して,近不偏検定の構成を信頼区間を通して構成することに初めて成功した。これは,Westlakeにより提案されていた信頼区間の対称化を改良したものであり,長年埋もれていたこの手法の有効性を再評価させる契機を与えた。また,検出力関数を解析的に評価する方法を考案し,我々の構成した検定がAnderson-Hauckにより提案された検定法と同等であること,Westlakeの検定法と比較して格段に優れた検出力を持っていることを数学的に証明した。これらの結果については,研究集会で口頭よる発表を行い,論文にまとめた。 また,こられの結果を多次元,あるいは,PBEやIBEの他の同等性の定義への拡張を目指し,考察,検討を進めた。そのうち,PBEやIBEへの拡張については当初の研究見通しに無かった問題に直面し,十分な結果を未だ得られていないが,今後更なる研究を進めて行きたい。一方,多次元への拡張という問題に対しては,信頼区間の構成および信頼度,検出力関数の評価に有効である多次元分布に関する確率不等式の理論を新たに展開することが出来た。数学的には,鏡映群に関連して導入されるBruhat順序とmajorization順序に関する考察を深め,興味深い結果を導出し,これについて論文にまとめた。 その他,研究分担者の高田教授は,逐次推測,順序制約の下での推測など関連する統計推測問題での理論的研究を,同じく金講師は統計推測の理論的基礎となる確率分布の漸近理論の研究を分担することで研究課題の遂行に大きく貢献し,それぞれに非常に興味深い研究結果を導出し,それらを論文として公表した。
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