研究概要 |
本研究では,出力作用素が(-L)^γ(0<γ<1/2)に従属する非有界性を有する放物型システムを取り上げ,外乱に対してロバストなサンプル値H_∞コントローラの構成法を与えている.例えば,境界制御を有する拡散系は,このようなタイプの非有界出力作用素をもつ放物型システムとして定式化できる.ここでは,その放物型システムにサンプラとゼロ次ホールドを取り付けたシステムに対して,リフティングの手法と状態変数の変換を用いて等価的な無限次元離散時間システムに変換している.そして,この無限次元離散時間システムに対して状態空間が有限次元となるモデルを導出し,そのモデルに対してH_∞制御を達成するための有限次元離散時間コントローラを構成している.ところが,このような方法で構成されたコントローラが,もとのサンプラとゼロ次ホールドを有する放物型システムに対して,必ずしもH_∞コントローラとして機能しているとはいえない.そこで,離散時間剰余モードフィルタを付け加えた形のコントローラを考案し,これが有限次元のサンプル値H_∞コントローラになり得ることを証明している.また,有限次元サンプル値H_∞コントローラの具体的な設計手順を示している. さらに本研究では,拡散係数が十分小さく無視できるシステムを制御対象として取り上げている.二つの管から構成される境界入力を有する並流型熱交換器をモデル化すると,熱拡散を考慮した場合には二つの移流拡散方程式,すなわち放物型偏微分方程式系によって記述される.ここでは熱拡散係数をゼロとした方程式,すなわち双曲型偏微分方程式系に対して,サンプラとゼロ次ホールドを取り付け離散的な制御をする前に,最も基本的と考えられる,連続的な境界フィードバックを施した閉ループ系の安定性について解析している.また,境界入力を有するこの双曲型システムの可観測性および可到達性について解析している.
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