研究概要 |
2004年4月より2008年3月の4年間にわたり,エルゴード理論とくに力学系に対応するPerron-Frobenius作用素のスペクトルの研究を行なった. その方法は力学系に対応する生成関数を定義し,その再生方程式を構築することである.この再生方程式は行列で表現され,行列の成分の収束半径の逆数がPerron-Frobenius作用素のessential spectrum radiusになり,この行列式の0点がPerron-Frobenius作用素のスペクトルになることを示せる.これにより,力学系のエルゴード性や混合性,decay rateを判定できる. このPerron-Frobenius作用素のスペクトルに関する研究を発展させて,力学系の作るフラクタルの次元の研究やrotation numberに関する研究についても応用することができた. とくに力学系を用いて構成する疑似乱数の性質を研究した. low discrepancyである高次元の疑似乱数は,確率積分やそのの応用である数理ファイナンスの発展とともに近年,重要性が増してきている.1次元の疑似乱数を力学系により構成し,そのdeiscrapancyをPerron-Frobenius作用素のスペクトルを用いて記述することができた.しかし,本研究では高次元の力学系に対応するPerron-Frobenius作用素のスペクトルについては,形成的な形での表現が得られていない.そのことから,1次元の疑似乱数の構成は,理論的に完成され形を得ることができているが,高次元の場合には,限られたモデルにについて,応用ができたにすぎない.実際,low discrepancy sequenceは未だに3次元までの構成しかできていない.これを一般の次元についても構築し,さらにdiscrepancyに関する一般論を構成することが今後の重要な課題の1つである.
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