研究概要 |
Einstein方程式の数値シミュレーションは重力波観測に代表される宇宙観測において必要不可欠なものである。しかし実際の数値計算,特に強い重力場や長時間にわたる計算が必要な状況では,時間発展していくうちに束縛条件の破れが大きくなってしまい,ついには計算不能になってしまう,ということが頻繁に発生する。これを正確かつ安定的に行うために、どのような方程式の形式を選んだら良いかというのがEinstein方程式の定式化問題である。当研究の目的はこれについて理論的な枠組みを提案しその実証をすることにある。当補助金の交付前の準備状況は、束縛条件の発展方程式の固有値を用いた安定性の指標Constraint Amplification Factor(以下CAFと略)を提案している.これは多くの状況で理論通りの数値計算結果が出たことで、ある程度は成功したと言える。しかし課題も多かった。CAFが良くても長時間のうちにはいずれ発散してしまう状況が多く見られた。また束縛条件が破れなければ正しい計算をしている証左となるのかという疑問も残っていた。当研究期間でCAFによる評価に基づいた補正した形の形式を多く提案することができ、数値的な実証もなされた。それらは他の数値相対論研究者にも引用、利用され成果を生んでいる。また束縛条件の伝搬式が2次になるのを避けることで、さらに計算寿命を延ばすことにも成功した。しかし計算寿命は延びただけで結局発散してしまうという状況は変わらず、さらなる改善が求められるであろう。また厳密解が分っている場合に補正を適用することで、より真の解に近いものが数値計算で得られていることも分かった。もちろん、これは1つの例に過ぎないので、正しい計算をしている証左とまでは言えない。
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