研究概要 |
期間年度の前半は、滑らかな多様体M上の微分同相写像の作る群の表現について考えた。このような写像のうち、supportがcompactであるものの全体をDiff_0(M)と記す。この群に関しては、いままでに様々な既約表現が構成されてきたが、 本研究では、これらと本質的に異なる(同値でない)無限次元表現、無限大のmassをもったM上の滑らかな測度μの無限制限直積ν_Eを用いて構成した自然表現を対象とした。これはDiff_0(M)の対角的作用で準不変で、従ってDiff_0(M)の自然表現TがこのL^2 space上にできる。 つぎに、自然数上の有限個を置換する無限対称群の既約ユニタリ表現Πをひとつとり、M^∞上の可測関数fで次の性質を持つものを考える。(1)f(xσ)=Π(σ)^<-1>f(x) (2)f(x)は2乗可積分。このようなfの全体をH(Σ)として、ここへDiff_0(M)が対角的作用するL^2上の自然表現U(Σ)を持ち込む(ただし、Σ=(E,Π))。すると、ユニタリ表現(T(g),H(Σ)),g∈Diff_0(M)ができる。この表現(T(g),H(Σ))が既約であることはすでにいままでの研究で明らかになっているが、当該年度では、上記の表現丁の既約分解を問題とし、既約因子はこれらの(T(g),H(Σ))からなる、ということを明らかにした。 後半は、微分同相写像の群の表現の捉え方を少し変えて,その応用的側面を問題にした。例えば,無限対称群の解析,あるいはYoung図形の漸近的挙動の理論に目を向けて,それらを通して,Diff_0(M)の表現を考察し,意味のある関数等式を見出すこと,あるいは,逆に,Diff_0(M)の表現を通して無限対称群のregular表現を考察し,その既約因子のrealizationにapproachすること等が目標である。 近年,この方面の基礎的準備もしてきたので,無限対称群Sの研究にE Thomaの文献から入った。さらに、いくつかの群S上のpositive-definite functionの端点分解を調べた後、端点分解と既約分解の差異に注目した。 周知のように、正の定符号関数の端点分解は対応するユニタリ表現の既約分解を含み、なお、Choqetの定理による他の分解をも含んでいる。筆者は、いかなるタイプの端点分解が既約分解に対応するかを調べ、ひとまずの結果をえた。しかし得られた結果は未だ使い勝手が悪いので、より良い形に改良できるように現在、検討中である。これらが順調に伸展すれば、無限対称群のregular表現の既約因子のrealizationも夢ではないと思っている。
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