研究概要 |
1.3次元ユークリッド空間内にはめ込まれた曲面に対する非等方的表面エネルギーの臨界点(非等方的平均曲率一定曲面.以下,CAMC曲面と略記する)について研究した.特に,非等方的表面エネルギーが回転対称であって「凸性条件」を満たす場合については次の結果を得た. (1)埋め込まれた閉CAMC曲面は,(平行移動と相似を除き)ウルフ図形であることを証明した. (2)平行な二平面上に自由境界を持つ曲面であって,体積一定の条件のもとでの非等方的表面エネルギーと濡れエネルギーの和の臨界点となっているようなものについて研究し,次の成果を得た. (2-1)ウルフ図形の任意の部分は対応する変分問題のエネルギー最小解を与えることを証明した. (2-2)濡れエネルギー係数が非負である場合について,安定解の存在と一意性,幾何学的性質を決定した. (2-3)濡れエネルギー係数が負である場合については,CAMC曲面の安定性の判定及び安定解の存在と一意性についてのいくつかの判定条件を得た.さらに,いくつかの具体例についての数値計算により未解決な場合についての結果の予想をたてた. 2.一般に,CAMC曲面の具体例の構成は,回転対称なものと平均曲率一定曲面を除き,困難である.本研究において,ある種の対称性を持つが回転対称ではないCAMC曲面の構成法を得た.これは,CAMC曲面についての理論を,結晶学,数理生物学を始めとする自然科学のさまざまな分野へ応用するという観点からも重要であると思われる. 3.平面曲線の輪転曲線としての特徴付けについての新しい方法を得,平均曲率一定回転面に関する古典的なDelaunayの定理を一般化した.さらに,それを用いてCAMC回転面を特徴付けた.
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