研究概要 |
本研究はミリ波・サブミリ波帯における観測により,原始星の周辺環境や原始惑星系円盤の物理状態を詳しく探ることを目的としており,研究期間はH16-18年の3年間であった。この間の研究実績は次の3点である。(1)太陽の2倍程度の質量を持つ前主系列星HD163296について,野辺山45m望遠鏡によるCO(J=1-0)観測結果とASTE望遠鏡によるCO(J=3-2)観測結果を同時にモデルフィッティングした結果,ダスト連続波強度から導出された円盤総質量と星間空間における標準的なCO存在度とから予想されるものに比して,CO分子高温状態で極端に減少している可能性を示した。この結果は,光解離現象によって円盤ガス成分の散逸が進むとする理論的予想と整合的である。この結果は2007年3月における日本天文学会で口頭発表を実施した他,学術雑誌への論文投稿に向けた作業を進めた。(2)牡牛座分子雲中に存在している古典的Tタウリ型星を対象にしたCO(J=3-2)観測の結果,円盤内の質量降着活動の活発さに関する良い指標であるHα輝線強度が弱くなるに従って,中心星方向におけるCO強度の増大量が小さくなることが示された。この点を,2006年11月にいてスペインのマドリッドで開催された国際会議"Science with ALMA : a new era of Astrophysics"にて発表をした。(3)ASTE望遠鏡を用いた原始星候補天体HH212赤外線源に付随するアウトフロー起源のSiO(J=8-7)輝線を観測し,その分布が近赤外線で観測される水素分子振動励起輝線と大変良い対応を示すことを明らかにした。この結果は,日本天文学会欧文研究報告にて投稿論文が掲載された。
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