研究概要 |
ノーマルな中性子星とハイペロン混在中性子星に対してバリオン超流動及びニュートリノ放射率を調べ,中性子星の冷却計算に必要な入力物理量を提供した。冷却計算を遂行した結果,ハイペロン超流動と結合したいわゆる「ハイペロン冷却」(即ち,ハイペロン直接URCA過程)は標準冷却(即ち,修正URCA過程)では説明できないいくつかの冷たい中性子星を説明しうる速い非標準冷却シナリオの有力な候補であることが分かつた。 しかしながら,最近のNAGARA event(^6_<ΛΛ>He)による「これまでより弱いΛΛ間引力」の示唆がもし確定的なものになれば,Λ超流動は消失し,このためハイペロン冷却シナリオは成立しなくなる。そこでBCS理論を異なるフェルミ面をもつ場合に定式化することにより,ΛΛペアリングではなくΛΣ^-ペアリングに起因するΛ超流動を検討し,その可能性かあることを議論した。 また,別の速い冷却シナリオとして,「パイオン冷却」についても調べた。BCS理論形式を準バリオン間のペアリングに拡張し,また,^3P_2状態引力を最も効率的に活用しうる対状態を構成することにより,アイソバーΔの効果を含む結合パイオン凝縮相での準バリオンに対し,超流体エネルギーギャップを計算した。その結果,(0.1〜1)MeVのエネルギーギャップが見出された。これは,ハイペロン冷却が不成立の場合は,パイオン冷却が観測と整合しうる唯一の速い冷却シナリオであることを意味することになる。
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