研究概要 |
連星中性子星や連星ブラックホールの合体とその際に放射される重力波を詳しく調べるための3次元数値相対論コードの改良を行ってきた。さまざまのフォーマリズムによるコードを比較してきたが,全体的な傾向としては,計算精度,安定性などの観点から,いわゆるBSSN形式の系統によるフォーマリズムが最適であることが明らかになった。特に,グリッドサイズが大きくなった場合,複雑なフォーマリズムを用いることにより,数値誤差の蓄積が大きくなり,かえって不安定性を導きやすい傾向が見られた。また,計算精度と安定性の観点からは,準線形な楕円型方程式をなるべく正確に解くほうがよい傾向にあるが,楕円型方程式を解くためには,非常に多くの計算時間を要するために,これを効率よく解く方法を考える必要がある。楕円型の方程式は,座標条件にかかわるところに出てくるが,その場合は,必ずしも正確に解く必要はなく,拡散方程式のような形にすることにより,近似的に解けば十分であることも明らかになった。 以上のような基礎的な研究を元に,後半では,具体的に連星ブラックホールの合体の時間発展を追うための数値シミュレーションコードの開発を中心に行った。特異点を含む領域を計算領域から除外する方法についても,独自に開発し,十分な精度で安定したコードの開発ができた。ただし,より現実的な連星ブラックホールの合体に対して適用するためには,グリッドサイズがかなり大きくしなければならないことが判明し,並列計算機を最大限に効率よく利用した数値計算が必要である。そのためには,MPIなどを用いてプログラムのさらなる改良が必要であり,そのための基本的なプログラミング方法の開発も行った。
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