研究概要 |
1.原子核の変形,対相関,連続状態への励起を考慮に入れた準粒子RPA法の新しい計算コードを開発し、これを用いて、中性子過剰Mg,Cr,Feアイソトープなどの変形した中性子過剰核における新しい集団励起の発現可能性とその微視的機構を調べた。その結果、対相関の非等方な揺らぎと平均場の変形揺らぎが結合して新しい型のソフトな0+振動モードが現れることなど興味ある結果が得られた。 2.実空間座標表示Skyrme-Hartree-Fock計算で得られた平均場を基底とする混合基底RPA法の新しい計算コードを開発し、これを用いて、超変形核の8重極型ソフトモードに対する完全にセルフコンシステントなRPA計算を系統的に遂行した。その結果、S32からTi44に至るN=Z核、および、中性子過剰SulfurアイソトープS36,S48,S50の超変形状態の上に、様々な型の負パリティ・ソフトモードが現れることが示唆された。 3.ASCC法の基本方程式は大振幅集団運動の集団変数と粒子数空間におけるゲージ角を混合するある種のゲージ変換に対する不変性をもつこと、実際に方程式を解く際にはゲージ固定が必要であるが、どのゲージが実用的に便利であるかを確かめた。こうして、ASCC法を粒子数揺らぎ自由度(対回転)に関するゲージ不変性を満足するように一般化したかたちに定式化することに成功した。 4.ASCC法に基づいて、陽子過剰Se領域に見られるオブレート変形とプロレート変形の共存現象と多体トンネル現象を微視的に分析した。2つの平衡変形を結ぶ集団経路を自己無撞着に決定し、大振幅集団運動の慣性質量を微視的に導出することに成功した。ASCC法で得られた集団運動の慣性質量が(通常用いられている)クランキング公式で計算されたものより大きくなることを見つけ、その理由は(クランキング公式では無視されている)平均場の運動によって生ずる平均場のtime-odd項(時間反転によって符号を変える平均場の成分)の効果をASCC法は自己無撞着に取り込んでいるためであることを示した。
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