研究概要 |
カーブラックホールの線形摂動論の基本方程式である,Teukolsky方程式の数値解を,これまでの方法では得られない,非常に効率的で,かつ高精度な数値的方法により求めるコードを開発した.方法としては,Teukolsky方程式の斉次解を特殊関数の級数で表す方法を用いた.その数値コードを用いて,カーブラックホール周りの一般的な束縛軌道を星が運動する際に放出される重力波の計算,星がブラックホールに円運動しながら落下する状況における重力波放出の反跳効果の計算を行った. 地上でのレーザー干渉計重力波検出器の主要なターゲットである,コンパクト連星の合体に伴い発生する重力波に関連して、星がスピンを持つ場合のコンパクト連星系が放出する重力波の効率的に探査する方法について研究を行い,波形を少数のパラメータで近似的に記述方法の精度やデータ解析上の計算効率を調べた. コンパクト連星合体重力波を複数のレーザー干渉計検出器で検出する際のデータ解析法として,通常のコインシデンス解析法と,最尤法に基づくコヒーレント解析法について,信号検出能力の比較を行った.その結果,同じ場所で同じ方向を検出器が向いている場合について,コヒーレント解析がより優れていることを定量的に示した.また,2つの検出器のノイズに相関がある場合についてのデータ解析方法の定式化も行った. 重力波の理論波形を実際のデータ解析に適用する研究として,TAMA300検出器の2000年から2004年のデータの解析を行い,太陽質量の1倍から3倍の質量のコンパクト連星合体重力波探査を行った.その結果,統計的に有意な重力波信号は検出されなかった.また,我々の銀河系内でのイベントレートへの制限としで,一年間に20イベント以下という上限値を得た,これは,この時点で論文として公表されていた観測的な上限値としてはもっとも厳しい値であった.
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