研究概要 |
1.質量数A=6の原子核(^6He,^6Li,^6Be)において2個の3核子クラスター(^3H,^3He)分子共鳴構造を残留核から崩壊する荷電粒子を測定して調べた。これらの原子核は3核子クラスターが陽子・中性子と同じアイソスピンを持つため、2核子系と類似関係が成り立つ。しかし、2核子系の場合は基底状態として^3Sが存在するだけであるが、A=6の原子核ではRGM理論から2フェルミ粒子系としてさまざまな励起状態が予言されている。2個の3核子クラスターがLS結合した状態として^1P(T=0)と^3P(T=1)状態が存在することがわかった。前者は^6Liだけに存在し、後者は3つの原子核に共通に観測され荷電類似状態として矛盾しない結果である。^6Liにおける共鳴状態の励起エネルギーと幅は^1P(T=0):Ex=18MeV,Γ=5 MeV;^3P(T=1):Ex=21 MeV,Γ=9MeVであった。 2.軽い原子核のクラスター構造を持つ原子核の光分解反応の断面積は元素合成過程を研究する上で重要な物理量である。しきい値近傍の断面積は崩壊粒子の検出が困難なためその制度は充分なものではない。これまでの方法と異なる(^7Li,^7Be)荷電変換反応を用いるもので、反応スペクトルからγ線エネルギーの励起関数を求める方法である。この方法では1つの入射エネルギーでのエネルギースペクトルとして測定されるため、共鳴状態を少ない系統誤差で求められる。(^7Li,^7Be)反応はスピン反転(ΔS=1)遷移とスピン非反転(ΔS=0)遷移を区別して測定できるため、天体核反応で重要なM1(ΔS=1)遷移やE1(ΔS=0)遷移による断面積を評価することができる。 3.この方法は宇宙物理学や天体核物理学で重要な2つの反応に適用された。1つは重水素の光分解反応^2H(γ,n)のM1断面積を^2H(7Li,7Be)n-n反応から導出することに成功した。宇宙初期では数keV〜数100keVのエネルギーで核子は熱運動している。このエネルギー領域の^2H(γ,n)反応断面積を^2H(^7Li,^7Be)反応のΔS=1遷移から測定された。 2つ目は^4Heの光分解反応^4He(γ,n)の断面積を^4He(^7Li,^7Be)反応から求めた。太陽質量の10倍程度の恒星は終末期に重力崩壊して超新星爆発を起こして、我々身の回りに存在するさまざまな元素を合成すると考えられている。結果は^4HeのGDRはEx=27MeV付近にピークを持つ共鳴状態のような構造を持つことが明らかにできた。スピン-ダイポール共鳴SDRの強度分布も明らかにした。^4HeのSDRはEx=24MeV付近にGDRより幅の狭い共鳴状態として存在していることが分かった。
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