研究課題/領域番号 |
16540314
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
物性Ⅱ
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大政 義典 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30301229)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2005年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2004年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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キーワード | 濡れ / 臨海揺らぎ / 臨界点 / 前駆濡れ転移 / 動的光散乱 / 静的光散乱 / 相関長 / 水銀-サファイア界面 / 臨界揺らぎ / ダイナミクス / 臨界スローイングダウン |
研究概要 |
常温常圧における水銀は、ガラスなどに濡れない物質の典型例である。しかし、気体-液体臨界点(1478℃、167MPa)近傍の高温高圧下においては、水銀もサファイア基板に濡れ、しかも形成された濡れ相の厚みがある温度圧力で不連続に変化する。これは前駆濡れ転移(prewetting transition)と呼ばれる一次相転移現象である。本研究では、光学的な方法で濡れ層の静的・動的性質を実験的に調べた。具体的には、(1)光反射率測定、(2)熱輻射強度測定、(3)静的光散乱測定、さらには(4)動的光散乱測定を組み合わせた測定を行った。これにより、前駆濡れ転移の相転移ダイナミクス、さらには2次元と3次元の臨界現象のクロスオーバー現象の詳細を明らかにすることをめざした。 まず、静的光散乱測定の結果、濡れ層が存在する場合は、鏡面反射光の周囲にぼやけた散漫散乱光が観測された。興味深いことに、散漫散乱は上下方向(重力の働く方向)に長く伸びた形をしていることがわかった。これに対して水平方向には弱い散乱しか観測されなかった。このことは、濡れ層中の光散乱体の構造に重力が強く関わっていることを示唆している。PW近傍では厚い濡れ層と薄い濡れ層とが共存しているが、これらの境界が重力の作用により水平方向に配向したため、上下方向に強い散乱が生じたものと考えられる。また、動的光散乱測定の結果、厚い濡れ層と薄い濡れ層の境界線がレーザー光のスポットを横切る際に生じるものと考えられる、散乱光強度の間歇的な変化が観測された。その運動の速度を見積もると、境界線は主として上下方向に運動していることが示唆される。このように、様々な測定を組み合わせることにより、濡れ層の静的・動的構造および相転移ダイナミクスについての理解が深まりつつある。特に、重力の影響が大きいことを示唆する結果が得られており、実験結果の説明にこれをどのように取り入れるかが今後の課題である。 さらに、関連研究として、セレン-タリウム二液相分離系の石英に対する濡れ現象の研究も行った。この系は、タリウム濃度の増加に伴い半導体から金属へと転移する系であり、密度変化に伴い金属-非金属転移を起こす水銀と類似性をもっている。我々は、臨界点近傍では石英基板に対する濡れが起こらず、逆に臨界点から遠い低温側で濡れる"臨界点dewetting転移"を見いだした。これはCahnの"臨界点wetting転移"とは逆の結果であり、たいへん興味深い結果である。
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