研究概要 |
正方晶三元化合物TbCu_2Ge_2が示す"不思議なメタ磁性転移";磁化困難方向[001]方向に現われるメタ磁性転移がネール温度以上の30K付近まで残るという不思議な現象の起因解明を目的として,実験を進めてきている。 1.純良単結晶の育成;種々の物性測定および中性子回折実験のために,いくつかの単結晶試料の育成を行った。予備的な中性子回折を行った結果では,得られた単結晶はモザイクが大きすぎて,正確な回折実験を残念ながらできなかった.現在,より大きなより純良単結晶の育成を継続して行っている. 2.電気抵抗測定:多結晶試料ではあるが電気抵抗の温度依存測定を行った.ネール温度および低温の磁気転移点では,温度依存に,異常が観測された.その変化の様子から,T_N=12.3Kは二次転移,T_t=9Kは一次転移であると推察している、しかし,異常なメタ磁性転移が消える磁化率にブロードな山が現われる30K付近では,何も異常は観測されなかった. 3.TbCu_2Si_2単結晶の物性測定 Ge化合物との比較検討のために同系のSi化合物の単結晶を育成し,その磁気的測定等を行った.その結果,Si化合物は,Ge化合物と類似の振る舞いを示すことがわかった.したがって,この振る舞いには,GeをSiの違いは余り影響をおよぼしていない;原子間距離の影響等は余りないことがわかった. 4.結晶場 結晶場を知ることはこの磁気的振る舞いを理解する上でかかせない.現在,両化合物の結晶場の解析を磁化率,磁化および比熱測定結果を基に行っている.これにより,この不思議なふるまいの起因に関する重要な結果が得られると期待される.これらの結果は,近い内に発表できると考えている.
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