研究概要 |
ランダム系の数理の解析 任意の強さの不規則性と粒子間相互作用を持つ多体量子系の量子準位統計を記述する有効理論の構築と数値的検証を目標として主に以下の手法を試みた.(1)相互作用を持つ乱雑系の有効理論を導出するためのレプリカ法の数学的形式、特にPfaffian格子などの完全可積分系を適用する手法を整備しつつある.この手法を用いて,AIII型およびCI型の大域的対称性をもつ1次元乱雑系においては数値的に得た遷移的準位分布の一部を再現した. (2)上のアプローチとは相補的な手法として,弦理論の中心的主題であるAdS-CFT対応的手法を適用した.特に乱雑系がのる時空を境界とする湾曲した高次元時空をアドホックに選び,その古典的重力作用から乱雑系の2次相転移点におけるスケール不変な低エネルギー有効理論(エネルギー準位相関を記述する非線形σ模型)の導出を試みた. ランダム行列理論の量子物理への適用 ディラック演算子の準位統計を通じてQCDのカイラルおよび閉じ込め相転移の数値的解析を行った.特に非等方格子上でのクエンチSU(2)ゲージ理論において温度および境界条件を変化させ,QCD転移点近傍でのKogut-Susskindディラック演算子のスペクトルバルク中の小固有値の準位間隔分布・2準位相関・固有関数のフラクタル次元等を精密に測定した.ここで得た準位間隔分布を,局在転移点での準位統計を記述する直交型変形RMTの解析的結果によりフィットして良い一致を発見した.決定されたコンダクタンスパラメータは3次元Anderson模型の場合に極めて近いため,Diakonov-Petkov予想(クォーク波動関数の局在によるカイラル対称性の回復)が強く支持された.
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