研究概要 |
関東地方で行われた大規模な構造探査の結果や微小地震の震源分布に基づいてプレート境界形状を仮定し,プレート境界面におけるすべり欠損(固着)分布の推定を行った.プレート境界面が従来よりも浅く推定された結果,すべり欠損は以前の結果と比べてフィリピン海プレート上面のより浅い部分に推定されており,固着域の下限は深さ15km〜20km程度と推定された.想定される震源域が浅くなったことで,大地震発生時における地表の揺れは,従来の想定よりも大きなものになると考えられ,地震災害の面では重大な結果であると言える.固着域の空間的な分布に関しては,1923年関東地震の震源域に対応する部分に固着域が見いだされた一方,房総半島南端部より南東沖合にすべり欠損の大きい領域が見いだされた.この部分における破壊の有無がいわゆる「元禄型」と「大正型」という関東地震の2つのタイプを特徴づけているものと考えられる. 次に,フィリピン海プレートの下面が太平洋プレートと接している部分については,フィリピン海プレート上面のすべり欠損ベクトルの方向が陸側プレートとフィリピン海プレートの相対運動方向からのずれの分が太平洋プレートの沈み込みによる影響と推測された.さらに,2000年の三宅-神津イベント後に生じた関東地域における広域的な地殻変動パターンの変化の解析から,三宅-神津イベントによって短時間の内に生じたステップ的変化に続いて余効変動が検出され,様々な可能性を検討した結果,フィリピン海プレートと太平洋プレートの接する部分において余効すべりの生じた可能性が高いことが分かった.こうしたプレート境界面のすべりは通常は観測されないが,三宅-神津イベントによる大きな擾乱によって初めて検出されたと考えられる.
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