研究概要 |
本研究では,まず,さまざまな全球データ(ECMWF, NCEPや衛星観測データ)を入手し,特に熱帯対流圏界面領域のデータ質について相互比較・検討をおこなった.その結果,ECMWFの再解析データ(ERA-40)は長期間にわたって安定したデータ質を示しており,解析に適当であることがわかったので,ここではおもにERA-40データの100hPa東西風と温度場に注目し,対流圏界面付近に卓越する赤道ケルビン波さらには季節内変動の特性を明らかにするため,時・空間スペクトル解析をおこなった. 対流圏界面付近の温度場・東西風についてみると,2種類の周期の東進シグナルが卓越している.1つは2週間程度の周期をもつ赤道ケルビン波であり,もうひとつは1-2ヶ月の周期をもつ季節内振動である.これらの変動について,特徴的な時空間フィルターを通したグリッドデータを再構築し,それら変動成分の経度・時間変動性について調べた. 季節内周期振動は対流とカップルして東進し,その季節・経度変動性は対流圏内の卓越した変動の1つであるMadden-Julian振動と一致した.衛星観測から得られた水蒸気データとも組み合わせた解析から,この季節内変動にともなってあらわれるケルビン波応答が,水蒸気の脱水過程に寄与していることを明らかにした(Eguchi & Shiotani,2004). さらに,赤道ケルビン波の活動度をより詳細に理解するため,閾値を設定して3467例のケルビン波事例を抽出した.これらを合成してその構造について調べたところ,ケルビン波の発生地点付近には対流活発域が存在し,約180°東進して対流活発域に入り変形する様子が捉えられた.ケルビン波の通過数,開始数,背景場東西風と活動度を比較した結果,開始地点から東風の領域では通過数が多く活動度が大きくなることもわかった(Suzuki & Shiotani,2006).
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