研究概要 |
中部大学の袴田は自身が開発したコロナ磁場ポテンシャルモデル(RF-Model)を用いて,太陽半径の2.5倍の球面(ソース面)と光球面の間の磁力線のトレースを行い,強度と三次元構造の両者の分かる高分解能のコロナ磁場の図を描いた。この研究では,約2太陽活動周期(22年間)にわたる201カリントン周期の間,1周期(約27.3日)毎に1枚の図を描き,計201枚の図から動画を編集した。太陽活動極大期付近の磁場極性の反転や,極小期付近の安定した双極型磁場構造等の時間変化が直感的に分かるようになった。磁力線のトレースにより,直接比較のできる同じ磁力線上のコロナ磁場動径成分(B_<r_sou>)と光球磁場動径成分(B_<r_pho>)が求められるので,袴田は13カリントン周期分の,ソース面上の,B_<r_sou>の分布図とB_<r_pho>の分布図とを作成した。名古屋大学の小島は電波星からの電波強度の観測値からトモグラフィーの方法で太陽風速度(V)を推定し,磁場と同じ期間の,ソース面上のVの分布図を描いた。磁場強度によりデータを2つのグループに分けると,V,B_<r_sou>,B_<r_pho>の間には以下の関係のあることが分かった。 (1)-1.5<log_<10>|B_<r_sou>|<0.0かつ-1.0<log_<10>|B_<r_pho>|<1.5のグループでは V=960.5+328.6log_<10>|B_<r_sou>|-72.0log_<10>|B_<r_pho>|の平面の式. (2)(1)以外の範囲のグループでは, V=495.4+21.3log_<10>|B_<r_sou>|-18.5log_<10>|B_<r_pho>|の平面の式。この結果は,太陽風が, (1)コロナ磁場強度に比例して400km/sから900km/s程度まで加速される風と, (2)磁場に依存せず常に436km/s程度の速さで吹き出す背景の風 の2種類に分けられることを示唆している。
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