研究概要 |
1.日本列島における中新世以降の広域テフラ層の検出については,新潟地域をはじめ,秋田県男鹿半島,福島県の太平洋岸,栃木県山地域,房総半島,静岡県掛川地域,伊勢湾周辺地域,長野地域など日本列島の多くの地域について検討を行ってきた.その結果,これらのいくつかの地域間で相互に対比しうる広域テフラ層(同一時間面)を10数層以上見出すことができた.例えばZnp-大田テフラ層(約4.0Ma)や大峰-SK110テフラ層(約1.6Ma)は日本列島の広い範囲で広域に見出された.これらの結果は日本列島の地史(地球環境史)を時間的に厳密に復元する上で極めて重要である.とくに鮮新世以降については,これまでの研究ともあいまってその時間・空間的なフレームワークがほぼできあがったものと考えている. 2.テフラの拡散・堆積機構の検討については,とくに水中重力流として拡散・運搬されたテフラを認定し,その流走メカニズムについて堆積学的見地から検討した.その結果,そのメカニズムには上越火山灰やSK050テフラのような極めて乱流的な要素が強いものから,SK110テフラのようにplug flowに近い流れと考えられるものまでいくつかの異ったタイプのものがあることが明らかになった.また新潟地域のSK110テフラ層は陸域では長野県大町市周辺の大峰溶結疑灰岩層,海或では秋田県男鹿半島のkm3テフラ層まで対比されているが,これらの同一のテフラ層の層相・層厚の地域的変化や粒度狙成の垂直変化を詳細に検討し,このテフラが水域では2相の重力流流として流走したことを明らにした.これらが一連の流れであれば,大町市西方の陸域から,男鹿半島まで約450kmを流走したことになる.このような例は世界的にも知られていない.これらの結果は,2006年8月の国際堆積学会議で発表した.
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