研究概要 |
ブルネ正磁極期の地磁気エクスカーションの記録をレビューし、おおよそ23のエクスカーションが存在すること,そのうち18については複数の地域で信頼できる記録が得られることが判明した。全部で23のエクスカーションのうち20個に関して,ODP Site 983の相対磁場強度変動曲線の極小値との対応が見られ,地磁気エクカーション発生時に地球磁場強度が小さくなっていることが確認された。このように多数のエクスカーションが存在することは,地球磁場は今までに想像されてきたよりも不安定であることを示唆する。また、バイカル湖から得られたVer96-2,St.7コアからIceland Basinエクスカーションの記録を得ることができ、見かけの古地磁気極(VGP)がアフリカ南部からオーストラリアを通るインドを中心とした反時計回りのVGPパスに乗ることがわかった。これまで報告されている2つのバイカル湖の記録、それから北大西洋・南シナ海の記録とおおむね一致し、Laj達(2006)が指摘したように、Iceland Basinエクスカーション時には地球磁場は双極子的な形をしていたことが示唆される。さらに、東シナ海のMD982195コアから1万4千年前と6千年前の2つの地磁気エクスカーションの記録を得ることができ、中国北京で報告されている2つのエクスカーションの記録(1万4千年前と5千年間)とほぼ一致する(Zhu他,1998)。これらのエクスカーションは、氷河湖であったAggasiz湖の決壊によるメルトウォーターパルス1Aおよび縄文海進による急激な海水準の上昇に引き起こされたコアマントル境界での差分回転に起因すると推察される。ただし、1万4千年間のエクスカーションは帯磁率異方性に乱れが見えるため慎重に検討する必要がある。
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