研究概要 |
本研究は,地域間・地帯間でペルム紀後期有孔虫分類群の系統関係・時空分布・特徴種や群集組成の相違を検討し,ペルム紀後期有孔虫化石の古生物地理や含石灰岩層の形成場・形成機構などテクトニックな意義を総合的に考察することを目的としてしる.このため,各地の石灰岩で野外調査を繰り返し行い,多数の岩石薄片を作成し,本研究目的を遂行するための基礎資料の収集に努めてきた. 当該年度で得られた成果の多くは公表には至っていないが,山口県美祢市域に分布するペルム紀後期付加体常森層とそれを不整合に被う上部三畳系美祢層群平原層の石灰岩ブロックやクラストの岩相と含有有孔虫化石を詳しく調べた.その結果,従来平原層の基底礫岩とみなされていた"滝口石灰岩"や"滝口層"を三畳系美祢層群から分離し,ペルム系常森層に帰属させる方が適当であると考えられる. 宮崎県高千穂の上部ペルム系三田井層では,これまでペルム系最上部(Changhsingian)と考えられてきた部分は上部ペルム系下部(Wuchiapingian)に相当することが判明した.また,同様に赤坂石灰岩にもChanghsingianは発達しないことが確認された. 京都府の舞鶴帯では,含Lepidolina石灰岩礫とColaniella-Nanlingella石灰岩ブロックが隣接分布する露頭を新たに見いだし,Kobayashi(2003)が強調したように,舞鶴層群は層序的上下関係を示さない斜面堆積物であるとみなされる.兵庫県の舞鶴層詳では追加調査を行い,これまでのデータと併せて,有孔虫化石群集を3本の論文にまとめた. 「小林文夫コレクション」(筆者の兼務する兵庫県立人と自然の博物館に保管されている含有孔虫中・古生代石灰岩の岩石薄片)のデータベース化については,同コレクションのタイプ標本のデータベース化が完了した.
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