研究概要 |
隕石がうけた衝撃の大きさをカンラン石の格子歪みから定量的に評価するため,X線回折法で求められた格子歪みと衝撃圧との関係を求めた.また,X線回折法で求められるカンラン石の格子歪みが結晶のどのようなミクロな構造と対応するかを明らかにした.カンラン石の格子歪みは,研磨薄片から化学分析後に取り出した100μm大の個々の結晶について,ガンドルフィカメラを用いて行った.カンラン石のミクロな構造は,X線分析後の100μm大の結晶から集光イオンビーム法により透過電顕用試料を作成し,透過電顕により観察した. 衝撃実験から,カンラン石の格子歪みは,受けた衝撃圧の大きさに直線的に比例するが,衝撃継続時間を変化させた実験では,衝撃継続時間の増加とともに格子歪みと衝撃圧の関係を示す直線の傾きが大きくなり,2μs以上の衝撃継続時間で傾きは一定の値に収束する.衝撃を受けている実際の隕石より取り出したカンラン石の格子歪みとそれに対してこれまでに半定量的に見積もられた衝撃圧との関係から,カンラン石の格子歪みと衝撃圧の関係を示す直線の範囲を推定すると,衝撃圧として2割程度の幅を持つ範囲で直線の傾きが限定された.これまで行った最も長い1.8μsの衝撃継続時間での衝撃実験から得られた直線の傾きは実際の隕石から推定される傾きの範囲のほぼ中央に位置し,実際の隕石で得られた結果と衝撃実験で得られた結果はよく一致している.この結果を基に,コンドライト隕石が被った衝撃圧を2割程度の不確実さで定量的に推定することが可能となった. 衝撃を被ったカンラン石中の転位密度を透過電子顕微鏡観察を基に求めると,転位密度の対数値とX線回折線の広がりから求められる格子歪みとが,直線関係にあることが分かった.このことから,X線回折法で求められるカンラン石の格子歪みは衝撃作用により形成される結晶内の転位を反映したものといえる.
|