研究概要 |
本研究では,誘電体バリア放電における誘電体上の蓄積電荷の挙動と放電形態との関係を明らかにするための実験を行った.リンギング部を持つ印加電圧を用いた放電実験では,第1のパルスによる放電の後に,第2の比較的小さいパルスによって第1パルス放電で生じた表面蓄積電荷を消滅させて初期化することにより,一様な放電様式が得られることを明らかにした.更に,このように放電様式を左右する蓄積電荷の評価方法として,ポッケルス効果を用いた蓄積電荷の評価装置を構築し,沿面放電の解析に適用することによって,世界で初めてプラズマディスプレイ(PDP)形式の沿面放電における蓄積電荷の二次元空間分布の動的挙動を観測することに成功したPDP用のXe/Neガス放電では,二次元分布は比較的一様となり,本評価装置の二次元計測という特質を活かすことはできなかったが,Heを用いた場合には,電極面内において電荷蓄積が局所的に開始し,徐々にその蓄積領域を広げてゆく現象を観測することができた.最後に,この手法を当初目的であった,自己組織化フィラメントの放電形式に適用し,完全に動きが停止した自己組織化フィラメントの場合には,フィラメントが存在しない箇所での蓄積電荷量がゼロであり,フィラメントが存在する箇所では,1本当たり67nC/cm^2という電荷密度が蓄積されていることを明らかにした.なお,将来展望としては,用いる電気光学結晶としてより薄い結晶を用いることによって,細いフィラメント近傍の蓄積電荷の空間分布を測定することが可能になることを挙げたい.また時間分解測定については,高速のゲート動作が可能なイメージインテンシファイアCCDカメラを併用することによって,フィラメント1本に関する蓄積電荷の二次元空間分布の動的挙動を明らかにすることが可能であるということを提案し,本研究計画終える.
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