研究概要 |
本研究では,内部コイル型誘導結合プラズマ(ICP)支援スパッタ装置を用いて,Ti酸化膜のMgO単結晶基板上への成膜・評価を実施すると共に,2基のターゲットをIn-situで切り換えて連続成膜できるスパッタ装置を設計・製作し,成膜の基本性能を評価した,更に金属-絶縁体相転移を示すVO_2薄膜堆積及び不純物ドープTiO_2薄膜堆積を行った. 内部コイル型ICP支援スパッタ装置によるTiO、薄膜のMgO単結晶基板上への成膜・評価では面内2方位を有するルチルTiO_2が配向成長することを明らかとした.内部コイル型ICP支援スパッタ法では高密度プラズマ生成と共に,ターゲットセルフバイアス電圧の低下が生じることから,通常は結晶化が困難とされる高温安定相のルチル型結晶の成長が実現できたと考察された.更に,酸化に寄与する酸素の挙動に関しては共同研究者の進藤春雄教授と連携しながら進め,静電プローブ測定の結果を基に考察した結果,高密度ICP支援スパッタにおいて原子状酸素ラジカルが効率よく生成されており,且つ酸素負イオン密度も高いため,酸素負イオンが結晶成長へ与える運動論的効果を今後詳細に調べる必要があることがわかった.更に,NbをドーパントとしてTiO_2薄膜堆積を行った結果,結晶成長が良好な場合,10^<-4>Ωcmオーダーと透明導電膜レベルの低抵抗率を実現した1これらの成果は,今後TiO_2薄膜のエピタキシャル成長に基づく応用への基礎となる. 内部コイル型ICP支援スパッタ装置によるVO_2薄膜のSi単結晶基板上への成膜・評価では,従来スパッタ法では困難であった化学量論比の単斜晶系VO_2薄膜を堆積することができた.得られた薄膜は65℃程度で3桁以上の急峻な抵抗値変化,即ち金属-絶縁体転移を示し,今後スイッチングデバイス等への応用が期待される. また,In-situで切り換えできる2基のターゲットを有するスパッタ装置を設計製作し,Al及びCoターゲットを用いて成膜を実施した.その結果,連続成膜によって清浄な界面が保持されエピタキシャル層成長に極めて効果があることを示唆するデータを得た.今後,本装置を上記のICP支援スパッタ法と結びつけることで,結晶配向性の高い酸化物エピタキシャル薄膜の成長を実現できる目処を得た.
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